親と同居していた実家、相続後も住み続けられる?兄弟がいる場合に知っておきたいこと

もしあなたが高齢の親御さんの実家に同居している場合、親御さんが亡くなった後も、その家を引き継いで住み続けたいと考えているのではないでしょうか。当然の権利のように感じるかもしれません。しかし、あなたに兄弟がいる場合は、その兄弟も相続権を持っています。そのため、兄弟の意思次第では、これまでと同じように居住できるとは限りません。

親御さんが亡くなった後も継続して実家に住み続けるためには、事前に状況を整理し、相続の準備を進めておくことが重要です。

この記事では、親御さんと同居していた子どもが実家に住み続けたい場合に、どのような点を整理すべきかを解説します。あわせて、親御さんの生前にできる対策と、親御さんの死後にできる対応についても確認していきます。

目次

親と同居していたという事実だけで、相続した実家に住み続けられるとは限らない

実家に住み続けたい場合でも、まずは誰がどのような権利を持っているのかを把握しましょう。

最初にご説明した通り、親御さんの遺産である実家を相続するにあたって、あなたに兄弟がいる場合は、その兄弟も実家を相続する権利の一部を持っています。

そのため、相続人、つまり相続する権利を持っている人同士で、誰がどの程度の割合で実家の権利を保有するか協議する必要があります。

このとき、あなたが親と同居していたという理由だけで、実家について兄弟より強い相続権を持つということは、原則としてありません。

配偶者には配偶者居住権という制度がありますが、子どもには同じような強い居住権が当然に認められるわけではないからです。

兄弟がいる場合にまず考慮すべき権利|法定相続分・遺留分・遺言

次に、相続の権利について、もう少し細かく確認してみましょう。

相続人、つまり残された遺産を受け取る権利を持つ人の権利として、まず知っておきたいのが法定相続分遺留分、そして遺言の効果です。

なかでも法定相続分と遺留分の2つは混同されやすいものです。どのような違いがあるのか、具体例を通して確認していきましょう。

たとえば、親御さんが亡くなり、相続人は同居していた娘さんと、兄弟2人の合計3人だったとします。

さらに、兄弟2人はすでに家を購入して生活しているものとして考えます。主な遺産は実家で、その価値が3,000万円だったとしましょう。

このとき、この3,000万円の遺産に対して、誰がどの程度の取り分を持つか、民法でその目安が決められています。これが法定相続分です。

子ども3人の場合は、それぞれ3分の1ずつで、均等な配分となります。

つまり、単純に金額に直して考えると、1人あたり1,000万円相当の取り分があるということです。

Equal Graph Scoped Centered
同居していた子供(1人)
1,000万円
兄弟A
1,000万円
兄弟B
1,000万円

しかし、実家は現金のように簡単に3つに分割することができません。

もし同居していた娘さんが、実家を自分一人の名義として相続したいと考えるのであれば、他の兄弟には法定相続分である1,000万円相当の代償金などを支払う、という前提から考える必要があります。

ただし、親が「実家は同居していた娘に相続させる」と遺言書を残していた場合は、この前提が変わります。

法定相続分は、遺言などによる被相続人、つまり亡くなって遺産を残す人の意思表示がない場合に基準となるものです。遺言がある場合は、その内容に基づいて遺産を分配します。

ただし、原則として、遺言があっても兄弟の相続に関する権利が完全になくなるわけではありません。

遺言などによって取り分が大きく減った場合も、相続人には最低限の取り分が認められます。この最低限の取り分を定めたものを遺留分といいます。

相続人が被相続人の子どもである場合、遺留分は法定相続分の2分の1になります。

改めて、具体例を通して考えてみましょう。

遺産は3,000万円の実家、相続人は子ども3人で、遺言書で娘に実家を相続させると指定があったとします。

このとき、兄弟それぞれの法定相続分は3分の1ずつなので、遺留分はそれぞれ6分の1ずつになります。

最終的な権利を金銭的な割合で考えるのであれば、娘さんは2,000万円、兄弟はそれぞれ1人あたり500万円というのが一つの目安となります。

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同居していた子供(1人)
2,000万円
兄弟A
500万円
兄弟B
500万円

今回は、法定相続分・遺留分・遺言がそれぞれどういったものかをイメージしやすいように、単純な例で解説しました。

しかし、実際の相続はここまで単純ではありません。相続人ごとの主張や特別受益・寄与分など、考慮しなければならないことは少なくありません。

ご自身の場合の相続分がどの程度になりそうか確認したい場合は、弁護士に相談してみましょう。

用語の確認

遺言

亡くなる人が「自分の財産を誰に、どのように渡すか」を生前に示しておく意思表示です。遺言書がある場合、原則としてその内容が法定相続分より優先されます。

法定相続分

民法上の目安として定められている相続人(亡くなった人の遺産を受け取る権利がある人)ごとの取り分です。目安であるため、必ずその割合で確定するというわけではありません。

遺留分

遺言などによって取り分が大きく減った場合でも、相続人(亡くなった人の遺産を受け取る権利がある人)に認められる最低限の取り分です。どこまでの権利があるかは相続人によって異なります。

親が元気なうちに準備できているかで、実家相続の進めやすさは変わる

ここまでの話で、すでにイメージできている方もいらっしゃるかもしれません。

親御さんの死後も、同居していた子どもが実家に住み続けたい場合、親御さんの生前に相続の準備をしておけるかが非常に重要です。

まず準備したいのは遺言です。

相続では、被相続人の意思がそれぞれの相続人の取り分に大きく影響します。親御さんの生前、認知症などの傾向がない段階で、遺言書を用意してもらいましょう。

あわせて、兄弟への生前贈与や資金援助がある場合は、その記録を整理しておくことも重要です。

たとえば、過去に兄弟が住宅を購入する際に親御さんから金銭的な援助を受けていたり、生活援助のために金銭を受け取っていたりする場合、その分も事前に遺産を受け取ったという扱いになる場合があります。

これが認められると、残された遺産の分割では、他の相続人の割合が増える可能性があります。

ただし、実際に親御さんから兄弟に資金援助があったとしても、親御さんの死後に確認する場合は、どの入金が何の目的だったのかという証言を得ることができず、証明が難しくなることも考えられます。

そのため、親御さんが生前のうちに情報を整理しておくことが重要です。

誰にどのような援助をしたのか、それが贈与だったのか貸付だったのか、資料として残しておきましょう。

遺言がないまま親が亡くなったら、まず兄弟に希望を伝える

相続では、被相続人の生前の準備が大切であるとご説明しました。

では、親御さんが遺言を残していなかった場合はどうなるのでしょうか。確認していきましょう。

まず、親御さんの死後すぐに実家を出なければならないとは限りません。

もし他の相続人がいたとしても、親の許諾のもとで遺産である実家に同居していた相続人がいた場合、特段の事情がなければ、その相続人には遺産分割が終わるまでのあいだ、実家に居住を続けられる余地が認められることがあります。

ただし、ここで大切なのは、これは遺産分割が終わるまで住める可能性があるという話であり、最終的な実家の相続権を得るという話ではないことです。

最終的な実家の相続権を得たい場合、親の死後にまず意識したいのは、自分の立場や希望を兄弟に改めて把握してもらうことです。

これまで実家に居住しており、今後も居住を続けたいという意思を伝えましょう。口頭だけでなく、メールや書面で伝えておくと、後から認識の違いが生じにくくなります。

同時に気を付けたいのが、親御さんの死後に勝手に実家の売却を進めたり、大規模修繕をしたり、家財を処分したりすることです。

実家に住んでいると、それが自分の家のように感じて、修繕などを進めてしまいがちです。

しかし、相続の協議が終わるまでは、相続人全員が遺産に関わる権利を持ちます。現金と同じく、不動産も個人の判断で売却や大規模な修繕をすることは、原則として認められません。

親御さんの死後に法定相続分以上の相続の権利を主張することは、生前の対策に比べると難しくなります。

しかし、同居の経緯、介護、費用負担、兄弟への援助などを整理すれば、実家取得を目指すための材料になります

早い段階で方針を立てることが、その後の選択肢を狭めないことにつながります。

実家の相続で論点になりやすいポイントを確認する|特別受益・費用負担・名義確認

法定相続分・遺留分・遺言の説明の際にも触れましたが、相続では細かい論点がいくつも出てきます。

すべてを最初から理解しようとすると混乱しやすいため、ここでは争点になりやすいことをいくつかご説明します。

特別受益

被相続人の生前に、相続人がまとまった金銭的な支援を受けていた場合、特別受益として扱われ、その分を相続財産に持ち戻して計算することがあります。公平な相続分の調整を行うための制度です。

たとえば、兄弟の誰かが自宅を購入する際に親御さんから資金援助を受けていた場合は、特別受益として考慮される可能性があります。

特別受益を主張するには、親の通帳、取引履歴、贈与契約書、贈与税申告書、兄弟の不動産登記など、具体的な資料が必要になります。

また、遺産分割の場面では、相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を反映した具体的相続分の主張が制限される点に注意が必要です。

介護や生活の費用負担

相続人の誰かが親の介護をしていた場合や、生活費を負担していた場合、遺産分割の協議で権利を主張する材料になることがあります。

ただし、「自分がこれだけやってきた」という口頭での主張だけでは、認められない場合もあります。

介護記録、各種領収書、振込記録、実家の修繕であればその前後の写真などを残しておくと、主張が認められやすくなります。費用負担については、誰のため、何のために支払ったものなのかが分かるように管理しておきましょう。

実家の名義

不動産は、土地と建物が別々の財産として扱われます。実家についても、土地と建物がそれぞれ誰の名義なのかによって、相続の対象や交渉の前提が変わります。

もし親子の共有名義であれば、あなたの持分はもともとあなたの財産として扱うことができます。ただし、その持分が親から無償で移されたものである場合、生前贈与や特別受益として扱われる可能性もあります。

実家に住み続けたいなら、兄弟と揉める前に資料を集めておく

いかがだったでしょうか。

親御さんと同居していた子どもが、親御さんの死後も実家に住み続けたい場合、最も大きな分かれ目になるのは、親の生前に対策ができていたかどうかです。

同居していた期間、親の生活を支え、介護を担い、自身も実家を生活の本拠としてきた事情は、決して軽いものではありません。

しかし、法律上は、それだけで実家を単独取得できるわけではありません。あとで揉めないためにも、生前に準備できることは進めておきましょう。

また、生前に遺言を用意していたとしても、遺留分の問題は残ります。

兄弟に代償金を支払って実家の名義をご自身にする場合、それを見越して支払いの原資を準備できているかどうかも重要です。

すでに親御さんが亡くなっている場合は、実家の登記、遺産の内容、同居や介護の資料、固定資産税や修繕費の支払い記録、兄弟への援助の手がかりを集め、遺産分割の方針を整理することになります。

もし兄弟が実家の売却を希望していたり、あなたが継続して実家に居住することに反対していたりする場合は、早めに弁護士へ相談した方がよいでしょう。

兄弟との話し合いがこじれる前に、早い段階で資料を整理し、自分の状況でどのような主張が可能かを確認しておくことが大切です。


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