お世話になった人に、きちんと財産を残したい。
そんなときに候補になるのが養子縁組です。任意の相手を法律上の「法定相続人」にできる制度です。

養子縁組は相続の場面でとても強い効力を持ちます。
一時的な契約ではなく「生涯にわたって家族になる」関係をつくる手続きだからです。 ここでは、この養子縁組の解説と相続に関する思い込みを中心に整理していきます。
相続でよくある3つの思い込み
養子縁組の話に入る前に、相続でよくある思い込みを3つ確認します。
曖昧な理解のまま相続を進めてしまうと思わぬトラブルにつながりやすいため、おさえておきたいポイントです。
思い込み 1つめ:遺言書があれば誰にでも遺産を全部渡せる
遺言書で、任意の人に遺贈することはできます。
しかし、配偶者・子ども・親には「遺留分」という最低限の取り分を守る権利があります。
そのため、遺言があっても、全ての遺産を完全に思い通りに分けることはできません。
思い込み 2つめ:親戚なら誰でも相続人になれる
法定相続人になれるのは、原則として配偶者・親・子・兄弟姉妹までです。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子である甥・姪も含まれます。
一方で、叔父・叔母・いとこなどは法定相続人ではありません。
遺言で遺贈することはできますが、権利の性質や手続きの流れが異なります。
思い込み 3つめ:遺言や養子縁組は亡くなる直前でも間に合う
遺言は、本人が存命でも意思判断が難しくなると、特別な方式に変わります。
養子縁組も「届出を出せばその場で完了」ではありません。
役所に受理される前に本人が亡くなってしまうと、その養子縁組は有効になりません。
直前の駆け込みはリスクが高いと考えておくほうが安心です。
養子縁組で得られる効果と、気をつけたい条件
ここからが本題、養子縁組とは何かを解説していきます。
養子縁組は強い効力を持ちますが、一方で条件や注意点もはっきり決まっています。
知らないまま進めてしまう前に効果とリスクをセットで押さえておきましょう。
養子縁組で得られる主な効果
- 「子」として法定相続人になる
普通養子縁組・特別養子縁組など種類はありますが、いずれも法律上は「子」となり、法定相続人になります。
戸籍も書き換わり、親子として相続などの権利だけではなく、扶養などの義務も発生します。 - 遺留分を持つことができる
養子は、法律上「子」として扱われ、遺留分の権利を持ちます。
遺留分とは、遺産について最低限の取り分を主張できる権利のことです。 - 税金や手続きの扱いが変わる
養子縁組をすると、贈与とは税金の扱いも変わります。
相続税や各種手続きの進め方も異なりますが、一部例外もあるため、確認しながら税務面での影響を前提に設計することが大切です。
養子縁組をする際の主な条件・注意点
1. 負債も一緒に引き継ぐ可能性がある
相続では、プラスの財産だけでなく、借金などの負債も引き継ぐことになります。
ただし、家庭裁判所で「相続放棄」や「限定承認」の手続きを取ることで、相続を放棄する制度もあります。
2. 税法上の「法定相続人の数」には上限がある
民法上、養子の人数に制限はありません。
しかし相続税法では、基礎控除や生命保険の非課税枠などを計算するときに数えられる「法定相続人の数」に、上限が決められています。
一般的には、次のような扱いです。
- 実子がいる場合:養子は 1人まで
- 実子がいない場合:養子は 2人まで
この人数を超えて養子縁組をしても、一般的には税法上の優遇は広がらない点に注意が必要です。「うちの場合はこの上限に当てはまるのか?」というような具体的な判断は個別にご相談ください。
実際に養子縁組を検討するときは
実際の相続で養子縁組を行う場合は、法律と税金の両方を見ながら条件に合わせて慎重に進める必要があります。
弁護士だけではなく、税理士や司法書士と連携し、費用や手続きの段階を含めて全体の設計を一緒に組み立てていくイメージです。
アストルム法律事務所では相続のご相談に対して地域の専門家と連携体制を整えてのご対応が可能です。
「誰に、何を相談すればいいのか分からない」という段階でもはじめから丁寧にご説明いたします。
ご相談をご希望の方は、お電話またはお問合せフォームからお気軽にご連絡ください。


